「そこまで言うならお前の言うこと、信じるよ・・・。」
プロジェクトリーダーである取締役 営業部長、N.Oが、米国出張中の夕食後にほろ酔いで受けたツアーレップからの猛烈な電話でのアプローチ。
それが、『N.S.PRO MODUS3シリーズ』誕生に向けて押された最後のスイッチでした。
2009年、『N.S.PRO PROTOTYPE』としてひっそりとUSPGAツアーでデビューした『N.S.PRO MODUS3シリーズ』。
その頃は世間はおろか、社内の誰もがここまでに世界中のゴルファーに愛されるブランドに育つとは思ってもみていませんでした。
ただ一人、USPGAツアーレップとして契約を結んだ『リー・オイヤー』を除いては・・・。
「アメリカツアーで通用するシャフトづくりがしたい。」その想いで開発をスタートし、出来た初号機は135g超のヘビーシャフト。かなりのハードヒッターが強打しても、吹け上がる要素すら微塵もない超ハードスペックのシャフトは、まだなんの実績もない中で、いきなり20,000本の試作品と私たちの夢と共に、アメリカの地へ旅立っていきました。
結果は・・・見事な大惨敗。
ことごとく浴びせられたのは、「こんなに重くて硬いシャフトなんて、誰が使えると思う?」そんな言葉でした。
それもそのはず、使用者もいないUSPGAツアーの情報は、テレビや雑誌で情報を得るものだけが、私たちにとっても最新かつ最大だったのです。
そこから一年間の短期プロジェクトで、「今までにない画期的な二面性を持つシャフト」の設計開発がスタートしたのです。
「成功」の二文字を信じて、リー・オイヤーから届くレポートを穴が開くほど読み込み、必要に応じて幾度となくツアー会場に足を運び、USPGAツアープレイヤーのフィードバックを受けて、全く新しいツアーシャフトの開発をリスタートさせました。
スイングタイプは数あれど、リリースのタイミングは大きく分けて2つ。アーリーリリースとレイトリリース。この2つのリリースタイミングに適応するシャフト——コードネームは『DP(Dual Profile=二面性)』。
極端に高い先端剛性と、極端に低い中間剛性。この組み合わせが、アーリーリリースのゴルファーには中〜高弾道のボールを、レイトリリースのゴルファーには低弾道のボールを打ちやすくさせる。さらに、世界最高峰のプロゴルフツアーであるUSPGAツアーの選手の「手」となる高い操作性。
「スチールシャフトには設計自由度がない。」—— この言葉を過去のものとした独自の肉厚調整加工技術『MSA(Multi Shape Adjustment)テクノロジー』。この技術を駆使し、スチールシャフトの設計限界を突破して産まれたシャフト。
これが後に『N.S.PRO MODUS3 TOUR120』と銘打って誕生した、『N.S.PRO MODUS3シリーズ』の初号機です。
ギアにこだわりのあるショットメーカーの間でその評判は瞬く間に広まり、着々と使用選手を増加。そしてついに、2016年の「全英オープンゴルフ選手権」制覇へと貢献しました。
シャフトの出来は良い。性能には自身がある。しかし、果たしてこの様な特殊なコンセプトを持つアイアンシャフトが世間に受入れられるのか?
重量も一般的なプロ・上級者向けのアイアンシャフトと比べると軽い。シャフト特性にもクセがある。発売に向けて懐疑的な意見の方が多かった社内の意見をまとめ、リー・オイヤーの言葉を信じて発売への舵を取ったのが、プロジェクトリーダーのN.Oでした。
『N.S.PRO MODUS3 TOUR120』の持つ高い性能は、プロゴルファーだけでなくアマチュアゴルファーにも高いパフォーマンスを発揮し、USPGAツアー最高の使用率(2018年4月・記事公開当時)に加え、主要ゴルフブランドで最も多く標準採用されるモデルへと成長を遂げました。
次回は、第2弾『N.S.PRO MODUS3 TOUR130』の開発に触れたいと思います。
日本シャフトHP:https://nipponshaft.co.jp/