ウェッジを考える

WEDGE=くさび

くさびとは、

●断面が V 字形をした木・石・金属などでつくった部品・道具。枘(ほぞ)穴に差し込んだ部材を固定するためにすき間に打ち込んだり、石を割ったり、重いものを押し上げたりするのに用いる。
●二つのものを固くつなぎ合わせるもの。きずな。
という意味だそうです。

ゴルフクラブにおける「くさび」とは、カップとボールを固くつなぎ合わせるためのクラブという意味でしょうか。

なかなかおしゃれなネーミング方法ですね。

おしゃれと言えば、以前日本シャフトブログにも登場した筆者の「ファッション師匠」が、最近の弊社のInstagramの投稿を見て、こんな質問をしてくれました。

「アイアンとウェッジのシャフトは、用途によって変えるのが正解なんですか?
今ウェッジの本数が増えてきている中で何度まで変更するといいとかってあるんですか?」

もう何年かのお付合いで、最近は飲み友達のようになっている「師匠」からの質問を解説してみたいと思います。

この様な質問は実際にお問合せでも多く頂きますので、皆さんも気になるところではないかと思います。

ウェッジ専用シャフト『N.S.PRO MODUS3 WEDGE』がどのようなシャフトであるかは、過去の記事もあわせてご覧ください。

それでは実践編に参ります。

ウェッジシャフトのセッティングとして有名なのは、アイアンシャフトに対して少し柔らかめなシャフトを装着すること。

これは世界的に有名なウェッジデザイナーも提唱しており、特に彼がデザインしたウェッジを使用する(したことのある)選手はこの様なセッティングにしていることが多いと思います。

非常に理にかなったセッティング方法です。

アプローチショットは、フルショットに比べてスイングが小さくなります。
小さくなればヘッドスピードも落ちます。

となれば、アイアンで適正なスピードだとしても、それはあくまでアイアンショット時のヘッドスピードを基準にしたもの。
ウェッジショットのヘッドスピードに対して適正なシャフトフレックスを選択する必要があるのです。

その中で最もシンプルなのが、アイアンと同じシャフトでフレックスを落とすというもの。

振り感は変わらずにフレックスだけが落ちるので、フィーリング面での違和感を最小限に抑えることが出来ます。

ですがウェッジショット=アプローチショットというのは非常に繊細なもの。みんながみんなフレックスを落とせばいいの?というと、そうでもありません。

現に筆者は、アイアンシャフトよりも硬いシャフトをウェッジに使用しています。
※筆者も日本シャフトの社員も、ゴルフが大好きで本当によくクラブをとっかえひっかえするのですが、どうやら筆者は、アイアンを丸2年変えていない様です。素晴らしい。

それぞれのフィーリングと求める機能性とをマッチングさせる必要がありますので、一般的に幅広い層に受け入れられるであろう対応方法の、「アイアンシャフトに対してフレックスを落とす」について話を進めていきます。

これは非常にシンプルかつ理にかなったアレンジです。

でも、機能性という面ではそれだけでは不足するケースも多く存在します。

アイアン用シャフトをウェッジに使用する場合の最大のメリットは、〝フィーリングが揃えられる〟という点。

「飛び系アイアン」というジャンルまで定着しているアイアンというカテゴリーの中で、クラブセットに組み込むウェッジの本数が増えてきました。
加えて、以前よりも「アイアンショット」と「ウェッジショット」がやや切り離されてきているように見えます。

アイアンショットも高弾道低スピン(適正スピン)で直線的にコース攻略をしていくイメージが強まってきていて、それはどちらかというとウッドに寄っている感覚です。

となると、〝フィーリングマッチ〟も大切だけど、〝(ウェッジシャフトまたはクラブとしての)機能面〟にも着目をする必要が出てきませんか?

機能面で見れば、特に中上級以上のモデルのアイアンシャフトは、ヘッドスピードが落ちた状態にアジャストできる状態にはなっていません。先端剛性が利きすぎてしまいます。

例えば極端な話、ヘッドスピードが遅く力もあまりない女性ゴルファーに、RフレックスだからといってN.S.PRO MODUS3を打たせてみるとどうなるでしょうか?
スピンもかからず、ただ前に勢いよく飛んでいくだけになりますね。しかも普段よりも力が入ってしまう。

そのイメージに近い現象が起きます。

アプローチをしていて、結果的には寄ったとしても、思ったよりもボールが飛んでいってしまうような感覚になる時はないですか?

それがその現象です。これが怖くてイップスになってしまうゴルファーもいるほど、怖い現象ですね。

これの正体は、初速が出過ぎていること。

アプローチでの怖さを防ごうと思ったら、初速を落としてあげるのが一番。

極論をすれば、アプローチショットのほとんど全ての場面において、〝初速の速さ〟はデメリットになることがほとんどです。上級者ほど〝初速を出さずに打つ〟ことが上手に見えます。

上手な人ほど、ドライバーショットでもアプローチでも、ボールを打ち出してから目的地点にたどり着くまでの時間が揃っているような感覚。
必然的に、目的地点が遠くにあるドライバーショットは速く打ち出して、近くにあるアプローチはゆっくりと打ち出してあげる必要がある。

それをシャフトで実現しようとしているのが、『N.S.PRO MODUS3 WEDGE』です。

さらに、様々なイメージを出してあげたいアプローチショットは、絶対にフェースに乗っている感覚が必要。その感覚と機能とを両立させるべく開発した『N.S.PRO MODUS3 WEDGE』。

では果たして、どんなゴルファーに『N.S.PRO MODUS3 WEDGE』を使ってもらいたいか。

●アプローチで力んでしまうゴルファー
残り距離が近くなればなるほど、インパクトを正確にしないといけないと考えるゴルファーは少なくない様です。そして苦手意識があるからどうしても早く目的地点にたどり着きたくなる。
その結果、どんどん身体に力が入り、リズムが崩れてしまう。その結果ダフリやトップなどインパクトや距離感が安定しないゴルファーは、アイアン用と比べてややしなりを感じやすい『N.S.PRO MODUS3 WEDGE』の重さとしなりに身を任せて頂くことがおススメです。
N.S.PRO MODUS3 WEDGE』のマイルドな先端部がインパクトの強さを吸収してくれるので、多少力んでしまっても安心です。

●ソールを活かす(バウンスを使う)という意識が強いゴルファー
N.S.PRO MODUS3 WEDGE』の特徴は、先端剛性をややソフトにしたことによるフェースコンタクトの良さだけでなく、〝抜け感〟が良いことにもあります。
先端剛性が高い=先端が重いシャフトは、ちょっとしたタイミングのズレが生じた際や、低ヘッドスピード帯においては〝クラブが刺さる〟挙動を引き起こしがちです。
N.S.PRO MODUS3 WEDGE』は、そのようなシャフトを打ち慣れたゴルファーが打つとかなり〝抜け感〟が強いシャフトですので、ソール性能(バウンス)を最大限に活かすことが出来ます。
ハイバウンスを使っているのにクラブが刺さってしまう方、跳ねてしまう方もシャフトを見直してみた方が良いです。

●アプローチで出来る限り色々なイメージを出していきたいゴルファー
ボールコントロールの基本は、フェースとボールの接触時間を長くしてあげること。
しっかりとしたフェースへの〝乗り感〟を感じやすい『N.S.PRO MODUS3 WEDGE』は、上げるも転がすも自由自在。
アプローチ巧者は、本当にボールがゆっくりと飛んでいくものです。

一方で、アプローチでもあまりテクニックを使うとかではなく、あくまでショットとアプローチはお互いに延長線上にあるという考え方の場合には、アイアンと同じものを使用して頂いた方が、目線で起きる違和感は起きづらいです。また、手に残るフィードバックとしてのインパクトの厚みとか重みの要素も統一感も図れます。

振り幅で打つ距離が決まっていて全く変わらない、という方はこのタイプではないでしょうか。
(もちろんどんなタイプのゴルファーでも距離に対しての振り幅のイメージを持つことは大切です)

ここからは具体的なセッティング例です。

N.S.PRO MODUS3 WEDGE』を使用する際に、どのロフトのものを変更するのが良いのか?

まず、一番下のロフト(最もロフトの寝ているウェッジ)は確実に。

それよりもロフトの立つウェッジは、ショット(スリークオーターからフルスイング)とアプローチとの割合で考えることをお勧めします。

N.S.PRO MODUS3 WEDGE』は、アプローチショットにおける機能性を追求したシャフト。

全体的に素直な剛性分布で仕上げていますので、ショットの際もフィーリングに違和感が生じないアレンジをしています。
しかし、違和感がないのとマッチしているのとでは少し違う。

例えば50度や52度、54度など、85~100ヤード前後を狙ってショットをしていくようなウェッジの場合は、その頻度の高さに応じてアイアン用にするか『N.S.PRO MODUS3 WEDGE』にするかを考えて頂きたいです。

目安としては、70%以上をショットで使用する場合にはアイアン用と同じシャフトで揃えることを推奨します。
(筆者は52度・58度のウェッジセッティングですが、80ヤード以下はよほどの林の中でない限りは58度でアプローチをしますので、52度までアイアン用の流れで組んでいます)

ウェッジシャフトは、ユーティリティと同じぐらいに「吊るし」のシャフトをそのまま使用しているゴルファーがほとんどです。

スコアメイクの階段を上るには様々な要素があります。
その中でも、アプローチに苦手意識を持っている方が本当に多いような気がします。

まずは練習することが一番ですが、なにか一つでもアプローチに課題を抱えている方は、一度ウェッジに装着しているシャフトを見つめ直すのもいいかもしれません。

そうそう、アプローチが苦手な方は、ご自宅でリフティング練習をするとアプローチ巧者への近道になるかもしれません。

まずはウェッジが持つクラブの重み、ヘッドの大きさや感触を遊びながら身体に染み込ませましょう。

まるでくさびを打つようなアプローチショットを放って、同伴競技者をアッと言わせましょう。

それでは。⛳

日本シャフトHP:https://nipponshaft.co.jp/

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