「いくらなんでも理解が出来ない・・・。」
一人、自席で頭を抱える開発担当者、K.F。
USPGAツアーレップであるリー・オイヤーの、どんな一言が彼をそこまで悩ませたのでしょう。
2009年にUSPGAツアー本格投入。2010年に『N.S.PRO MODUS3 TOUR120』として市販化された後も、ひっきりなしに押し寄せるシャフトの開発リクエスト。
その中でも特に頭を悩ませたのが、『N.S.PRO MODUS3 TOUR130』でした。
『高弾道・低スピンのシャフトを作ってくれ。』
このリクエストが、開発担当者であるK.Fの頭を悩ませました。
高弾道・低スピン性能が売りのこのシャフト。
リストワークが強く、上から打ち込みがちでスピン量過多による吹け上がりに悩むゴルファーや、手元が浮いてしまい、煽り打ち傾向になってしまうゴルファーにおススメですが、アイアンといえばスピンをかけて、曲げたり止めたり。
低スピンという概念が生じることなど想像もしていませんでした。
ゴルファーなら誰もが一度は聞いたことがあるであろう、「高弾道・低スピン」という言葉。ドライバーでは、「飛ばし」に繋がる要素として当たり前の様に目で見て、耳で聞く言葉ですよね。
しかし・・・アイアンショットで「高弾道・低スピン」といえば・・・そうです。ゴルファーなら誰もが頭を悩ませる「フライヤーショット」。これが最もイメージに近いはず。
「なぜそんなシャフトがUSPGAツアーで求められるのか・・・」
「アメリカのグリーンは硬くて止まりづらいのではないのか・・・」
これは、皆さんだけでなく、シャフトのプロである私たちですら考えることです。
とはいえ、さすがは世界最高峰ツアーであるUSPGAツアー。私たちの想像をいとも簡単に凌駕する考え方、スキルを持っていました。
USPGAツアーのグリーンは、確かに硬く仕上がっており、グリーンスピードも速く仕上がっています。グリーンがしっかりと締まっている印象です。
この、「締まっている」がキーワード。
冬場のグリーンを想像して頂くと分かりやすいと思いますが、ただ硬いだけのグリーンでは、高さで止めようと思っても、思わぬ方向にボールが跳ねてしまうことがあります。「冬場は花道から」が鉄則です。
締まったグリーンはひと味違います。スピードも速く仕上がっていることがほとんどですから、少しでもスピン過多のボールですと、ボールが戻りすぎてしまいます。
テレビ中継などで、グリーン奥からバックスピンで戻す—— 私たちアマチュアの憧れです。プロならではのワザですが、プロでも完璧にコントロールできるのは一握りと言われるスピンコントロール。ひとたびコントロールを間違えれば、バーディーチャンスがボギーのリスクを負ってしまうことにもなりかねません。
このリスクを最小限に留めるために、シチュエーションとしてどうしても必要な場面以外では、グリーンに落下してその場で止まるようなショットが重宝されます。
このために、USPGAツアーでは無駄なスピンを出来る限り抑えるようなシャフトを好む選手が多くいます。
コントロール性を確保するために必要最低限のスピンを確保し、無駄なスピンを抑える—— 『ツアースピン性能』が不可欠です。
ツアースピン性能を実現する為、ここでもMSAテクノロジーを活用し、中間剛性を高く、先端剛性を低く設計した、『N.S.PRO MODUS3 TOUR130』を開発しました。
しなやかにしなる先端部が、きちんと打出し角を確保し、しっかりと硬く仕上げた中間部でシャフトの暴れを抑えてくれます。
「先がしなるシャフト」はなんとなく暴れてしまいそうな印象ですよね?
ですがご安心下さい。開発者曰く、「このシャフトの中間部は世界で最も硬い部類に入ります」と豪語します。
シャフトの縦しなりが発生しづらく、オートマチックな印象のあるシャフトで、重量級カーボンシャフトからの移行の場合もおススメです。
昨年春のメジャー第1戦で劇的な優勝を飾ったツアープレイヤーも開発当時から愛用し続けるシャフト。『N.S.PRO MODUS3 TOUR130』の秘密に迫りました。
ここまでは、USPGAツアーが主な開発の場でしたが、もちろん、国内男子ツアーからもたくさんのフィードバックを受けています。
次回はそんな、国内男子ツアーで揉まれて誕生したシャフト『N.S.PRO MODUS3 SYSTEM3 TOUR125』誕生の秘密に迫ります!!
日本シャフトHP:https://nipponshaft.co.jp/