20年目の覚醒 第二話

しかし、人というのは本当に欲深い生き物。

今までよりも楽に打てる道具が見つかれば、もっと楽に打てる道具、自分のフィーリングや飛距離などの欲求を満たす道具を求めるのは当然のこと。
日本シャフトも、そうしたゴルファーの欲望を糧にして、ここまでいくつもの新製品を世に出してきました。

N.S.PRO 950GH』が浸透すれば、またそこに新たな反応が生まれるのは当然のことです。

まず言われたのが、〝グリップ径が太い〟という声。

N.S.PRO 950GH』は15.50mm(M62)というグリップサイズです。
ゴルフシャフトとして一般的なのは15.24mm(M60)でしょうか。やはりそれからすると、テープ一巻き分以上太くなる。

N.S.PRO 950GH』は、そのグリップ径と薄肉構造との相乗効果でグリップ部にたわみ(偏平)が生じ、インパクト付近ではそれがしっかりと復元することでシャープな走り感や軽快感に繋がることが特徴。それがこのシャフトの売りでもあります。

機能面ではそれで良かったとしても、人の手の感覚、指先の感覚は思った以上に繊細なもの。
フィーリングの部分で犠牲にせざるを得ない場面があったことは否めません。

また、2000年代前半にはグリップにも大きな変化がありました。
それまで主流だった黒色ベースのゴム素材で出来たグリップに加えて、エラストマー素材を使用したカラフルなグリップが台頭しました。

多少太く感じたら少し引っ張って伸ばして薄く(細めに)仕上げることも出来るゴム素材のグリップに比べて、エラストマーは伸びないため、お気に入りのカラーのグリップを装着しようとすると仕上がりが太くなってしまい、握りづらさが出てしまうこともありました。(筆者注:ゴム素材のグリップにも、エラストマー素材のグリップにもそれぞれの良さがあり、それぞれの優劣を示唆する意図は一切含みません。)

さらに、いわゆる「シャフト用語」のはしりではないかと思っていますが、〝中折れ感がする〟という声。

中調子のシャフトですから、シャフトの中間部がしなるのは当然のこと。

それまではシャフト先端が硬く、手元側がしなるシャフトがスタンダートなスチールシャフト。

その中にあって、シャフト手元部から先端部にかけてしなり感が増してくる「N.S.PRO 950GH」は、いわば真逆の特性。

先端が硬いということは、先端が重いということ。
よく言われる「ヘッドが利く」感覚を手で感じやすい。

やや乱暴な言い方ですが、その当時はとにかくダウンブロー。タメを作って上からボールを潰して打つ。
「ボールを高く遠くへ飛ばしたければ上から叩け」なんて、当時よく教わったものです。筆者も、当時のスイングイメージはダウンスイングで右ひじを右のズボンのポケットに入れるイメージでした。

それをやろうとすると、ある程度の「ヘッドの利き」は大事だし、先端剛性も必要です。

対して、振り抜きの良さが特徴の「N.S.PRO 950GH」はそこまでのダウンブローを必要としない。
払い打ちでもしっかりとボールを捉えてくれるやさしさが特徴のシャフトです。

そう・・・・。
上級者やハードヒッターが、いつもと同じ感覚で「N.S.PRO 950GH」を打った時、自分の持っているフィーリングのイメージと全く違う箇所がしなる、そしてシャフトが扁平する。
それが所謂〝中折れ感〟の正体でしょうか。

これだけ多くのシャフトが世に出た今であれば、この言葉は生まれなかったかもしれません。

そして、近年すっかり市民権を得た「飛び系アイアン」とのマッチング。

ゴルフシャフトは、クラブヘッドとグリップと組み合わさってはじめて機能を発揮するもの。

そういう意味では、クラブヘッドの機能を生かすも殺すもシャフト次第。

アイアンはなかなか進化しない。

そう思っている方も多いのではないでしょうか。

決してそんなことはなく、アイアンも日々進化をしています。

マッスルバックからキャビティアイアンへと進化をし、中空アイアンが生まれポケットキャビティも出て、一見すると単一素材に見えても、複合素材で成り立っているアイアンヘッドもあります。

アイアンだって飛んだ方が楽です。やさしく打てた方が良いに決まっている。

ヘッド形状の進化と共に変化してきたのが、アイアンのロフト。

今でこそ7番アイアンで30度を切るロフトのアイアンも当たり前になってきていますが、20年前は35度前後、40年前までさかのぼると38度前後だったそう。
20年前と今を比べても、一番手以上もロフトが立ってきています。

ロフトが立つとどうなるでしょうか?

これはウッドの考え方とほとんど変わりません。

まず、単純には初速が出しやすく、スピン量が低下します。
反面で、打出し角は低下します。

アイアンでこれをするとどうなるでしょう?

そうです、グリーンで止まらなくなってしまうのです。

7番アイアンでのトータル飛距離が150ヤードだったとして、それが160ヤードに伸びました。
でも・・・ランが伸びただけだとしたら、そのアイアンはコース攻略の助けになってくれるでしょうか?

全くなりません。
少なくとも筆者は使いません。

単純にロフトを立てただけでは、アイアンとしての機能が向上したとは言い難いです。
ストロングロフトのアイアンは、充分に打出し角を確保することの出来るハイヘッドスピードのゴルファーには恩恵を授けたものの、一般のゴルファーにはかえって難しくさせてしまう要素も含んでいました。

アイアンとしての機能を向上させるためには、ロフトを立たせてもしっかりとキャリーでの飛距離アップにつながる打出し角を持たせてあげる必要がありました。
それが、アイアンヘッドの進化の歴史(注:ダイジェスト版)です。

昔と比べて一番手も二番手もロフトが立っているのに、高さは昔のロフトで打つよりも遥かに高い球を打つことが出来る。
それが今のアイアンヘッドのすごさであり、進化の賜物です。

さて、シャフトの活躍の場は?

ここまでのアイアンヘッドの進化がもたらした変化の中で、触れていなかったところがあります。

「スピン量」です。

ボールも低スピン化が進み、アイアンヘッドはロフトが立つことでスピン量が減少する傾向が進み、その中でも「飛び」を追求した「飛び系アイアン」の進化は止まらない。

簡単にボールが上がり、でも飛距離は出る。

ところが・・・ボールが止まらない・・・・・。

これが、アベレージゴルファーのヘッドスピードで「飛び系アイアン」を使用した際に生じる唯一のデメリットでした。

ここで初めてシャフトの出番です。

上がって飛ぶアイアンヘッドに、きちっと適正スピンが確保できるアイアンシャフトが組み合わさる。

なんとも魅力的な響き。

ですが、「N.S.PRO 950GH」は今からおよそ20年前に開発されたシャフト。

「飛び系アイアン」の「と」の字もない時代のシャフトです。

― ゴルフシャフトは、クラブヘッドとグリップと組み合わさってはじめて機能を発揮するもの ―

そう考えると、新たな一手を打つ必要が出てきます。

いよいよ最終話へ突入します。⛳




日本シャフトHP:https://nipponshaft.co.jp/